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怒髪天フレンチ!シュクレ

友人のアキラとランチを取ってきた。
場所は阿佐ヶ谷。新宿や渋谷のにぎわいはないが、
どうしてもたまに行きたくなる街だ。

外光を通す屋根つきの明るい商店街が南北に伸び、
大通りはクリーンで、歩道の幅が広く、
スーパーマーケットには生鮮食料品が充実している。
子供のいる世帯には安心、かつ便利だろう。

かと思えば、裏通りのごちゃごちゃした飲み屋街には
昔ながらの赤提灯がいくつも灯り、
今はなかなかお目に掛からなくなったマニアックな
ジャズ喫茶やクラシック喫茶が、きちんと繁盛している。

では古くさいだけの街なのかというと、
インディペンデント映画を興行する若者向けの
小さな文化施設もあれば、こじゃれた雑貨ショップや
カフェもちゃんと存在するのだ。

ごった煮なのに、ひとつひとつの味がぼやけていない。
どのジャンルに属する店もにぎわいを見せ、活気がある。

高円寺ほど「中央線テイスト」に寄っているわけではなく
多面性を持つ阿佐ヶ谷は、次回の引っ越しを
本気で考えているほど、お気に入りの街なのだ。

で、「ビストロ ラ シュクレ」。

第九小学校前でバスを降り、アキラと合流し、
レストランに到着。
アキラについてはこちらに詳述しているが、、
簡単にいうと、甲殻アレルギーの帰国子女であり、
私の数少ない親友のひとり。

メニューは、1700円、2400円、3500円…だったかな。
土曜なので、平日とは値段が違うかもしれない。

2400円のコースにした。
前菜・前菜2皿目・メイン・デザート・コーヒー・パン。
1700円だと、前菜が一皿になる。
各6〜7種類からチョイスできて、この値段は高くない。

高くないが、激安ではない。

世田谷の烏山には、1260円できちんとしたフレンチの
コースが食べられる店があり、とても美味しいのだ。
茗荷谷にも、ランチプレートは800円から、
ちゃんとしたランチコースなら1890円で提供してくれる
正統派フレンチレストランがある。もちろん美味。

その中で、ランチ1700円からというのは、驚くような安さではない、
というか、小さなビストロのランチの価格としては、いたって普通だ。

オーナー1人で切り盛りしていて、地元密着型で、
そこそこ繁盛している店に、
あまりハズレはないのだけれど…。

いやな予感。
まず、店内に、あまり清潔感がない。

昼なのに薄暗い店内、
ファンシーで趣味の悪い、古ぼけたビニールのテーブルクロス、
キッチンから出た料理を置く台にはごちゃごちゃと袋が
立てかけてあり、筆記用具などの置いてあるレジスターの台で
店員の女性がワインを瓶からデカンタージュしている…
などなど、どうしても気になってしまう。

実際に不潔ということではないが、
受ける印象に清潔感がない。

小さな店で、個人経営で、値段が安いのだから、
細かいところには行き届かなくてもいい。
もし、そう思っているのだったら、痛いな、と、
この時点で心配になってくる。

前菜は、日替わりの「生ハムとチーズの
ミルフィーユ仕立て」をアキラが。
私が「フォアグラとレバーのテリーヌ」をたのんだ。

日替わりのほうは、薄切りの食パン(!)に生ハムと
チーズをはさみ、それをミルフィーユ状に重ねたものを
バターでソテーしたもの。
食パンでミルフィーユしているので、当然、相当の
高さがあり、ホットサンド1個分のボリュームがある。
パターの吸い込みかたも相当なものだ。
見ているだけでおなかいっぱい。

私のテリーヌは、厚さ1センチくらいの一切れ。
回りを鴨の脂身でくるんであり、
ピクルスが添えてある。

味を書く前に、一言、苦言。
料理の大きさからすると、どう考えても小さすぎる皿は
ナイフとフォークの跡が縦横無尽につき、
その小さな傷たちで表面が完璧に曇っている。
磁器の特徴である、つるりとなめらかな表面を
完全に失ってしまっていて、ガサガサしているのだ。

家庭でも、皿がここまで曇ったら買い換えるだろう。
やはり、清潔感がない。 げんなりする。

前述した烏山と茗荷谷のレストランでこんな皿は
見たことがない。値段設定は同程度なのに、だ。

01_zensai(見た目こんなん)

気を取り直して、フォアグラのテリーヌを、ぱくり。
ぐえっ…。

むせかえるレバーの悪臭。
あわてて白ワインを頼む。
酒で流し込まなければ食えない。

レバーの香りが強い、とか、癖がある、とか、
そういう次元ではない。
私は、焼き鳥でも炒め物でも煮物でも、まったく抵抗なく
レバーが大好きだ。レバー特有の、血液の香りが好きだ。

レバーのまったりと余韻のある香りと、胸の悪くなるような
血の臭みとは、まったく別物であることを学習した。
これは、単に下処理に手を抜いているのではないか?

そのうえ、バターとクリームが多すぎる。
口に入れたときにデロリと溶け出す過剰な脂肪分。
バターにレバーを混ぜたような重さだ。

今まで食べてきた、あの、フレンチのテリーヌの
滑らかな舌触りは、決してクリームのみの効果では
なかったのだと、また学習。

前菜一皿でパンを一切れ食べ終えた。
パンに塗りつけて、ワインで流し込んだのだ。

アキラのほうも味見させてもらったが、見たまんま、
チーズとハムの入ったホットサンドだった。
不味くはないが、家で食うよ、こんなん。

前菜2皿目は、二人とも本日のスープ。
ジャガイモのスープ、トリュフ入り。
黒トリュフの粒がたくさん混ぜ込まれていて、
これは普通においしかった。
私はトリュフの香りが大好きなので、冷静な判断が
利かなくなるのだ。余談だけど、白トリュフのほうが好き。
ただ、直径が1センチもある大粒の油が無数に
スープに浮かんでいるのは…どういうことなんだ。

そして、メイン。
アキラが、鴨のロースト。
私が、+500円を払って、
オマール海老のアメリケーヌソース。

02_main(オマールでござんす)

見た目はちゃんと半身のオマール海老。
これで2400円+500円=2900円なら、納得しよう♪
と、穏和な気分になったのも一瞬。

いままでの人生で、オマール海老を食べた記憶を探り出す。
多くはない記憶の中の味と、目の前のこれは…

違う。
べつものだ。

ぷりんぷりんの、歯を跳ね返すような弾力のある身。
海老の味の濃厚なハサミの肉。コクのある頭部の味噌。

どの部分も、私を裏切ることなどなかった、今までは。

しかし。
ズブズブの水っぽい身。
茹でたときに湯に旨味が溶け、反対に塩水を吸収したような味だ。
塩辛いだけで味のないハサミは、無味のガムのよう。
臭みの強い味噌は、汚い海水のような風味がする。

急いで食べた。がつがつ口につっこみ、飲み下した。
ワインで口を洗うため。

アキラも、鴨を無言で食っている。
一切れもらって、唖然とした。
中までしっかりと、ウェルダンも裸足で逃げるほど火を通された
鴨肉は、ペランとした焦げ茶の破片。

普通、固まりのまま焼いてある鴨は、中がピンクで柔らかで、
噛むほどに鴨の力強い香りのするジュースが
飛び出してくるはずだ。

これは……焼きすぎでパサパサでケバケバで、
なんの肉か、さっぱりわからん。

前菜を食べたときはまあまあかなと言っていたアキラも、
蒼白になって無言。 そうだよな……。

一刻も早くコーヒーが飲みたい。口直しがしたい。

デザートは、アキラがモンブランのティラミス。
私は、とろけるテョコレートスフレ。

意外にも、これは及第点。
ほかほかのやわらかいフォンダンショコラだ。
スプーンを入れると、トロリと溶けてくるチョコソースも
回りのフカフカの生地も、とても美味しかった。

03_cake(スフレうまーい)

アキラのティラミスも味見させてもらったが、
洋酒の利いた大人の味で、かなりいける。うまい。
コーヒーも苦みがほどよく、普通においしい。

やっとほっとした。
ほっとしたけれど…コーヒーとデザートだけがうまいコース料理に、
2900円も、払えるだろうか。


否。断じて否。NO。ダメ。絶対。


…ひょっとしたらここのシェフは、一昔前の価値観で
固まってしまっているのではないだろうか。
フレンチは、やたら高いものだと。

こんなにも安くコースを食べさせる自分の店は激安店で、
だからこの程度の料理、この程度のサービスで、
不満など出るはずがないと。


はっきり言うが、安くない。


シミひとつない、まっしろな綿のテーブルクロスの上には、
クリスタルのワイングラスと水用のグラス。

みがきあげた銀のカトラリーは一皿ごとに取り替えられ、
顔が映るほど光る白磁の皿には料理が美しく盛られている。

厚地の綿のナプキンは、席を立つたびに何度でも従業員が
たたみ直しておいてくれ、席につくときは当然のように
椅子をひいてくれる…。


…こういう店だったら、1700円は安いだろう、確かに。
このブログに登場した店でいうと、ヴェルデュリエがここに
属する店だ。そして、ランチコースは2000円からだった。

狭いテーブルの間隔。
安くセンスの悪いビニールのテーブルクロス。
ナイフ傷でどんより曇った皿と、取り替えられることなく、
最後まで一組を使い続けるナイフとフォーク、
おまけに膝にかけるナプキンは紙製。

この種類に属する店でランチコース1700円以上は、
むしろ、高い方だ。

このシュクレと値段が変わらない、むしろもっと安い茗荷谷も
烏山も、「まっしろい綿のテーブルクロス」「綿のナプキン」
「皿ごとにカトラリーを取り替える」はちゃんと満たしている。
そしてなお、美味いのだ。


この味が「フレンチ」に映る阿佐ヶ谷の人たちは、
あまりにフレンチにウブなのではないか。

金を払うから空腹を返してくれ。

今回は、本気で腹が立った。



たまたま頼んだものがまずかたっただけで、他のものは
おいしいんです、という反論がある人もいるかもしれん。
でもね、二人でかぶらないように注文してんのに、
それが全部まずかったんだよ。
まずいものが4品もある店って…ダメじゃないか?

根拠のない誹謗中傷では断じてありません。
実際に食べた正直な感想です。


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コメント

何度も言うけど、
若崎さん、本当に文章が読みやすいです。

雑誌記事とかコラムとかを読む時、読む前に全体像を見ます。
その時、記事が長かったり、『、。』が少なかったりすると、
ゲンナリした気分になって、
凹みながら読み始めて、
途中飛ばしたくなって、
最後だけ読む
って感じになりがちなんだけど、若崎さんのパッと見、長い記事は、
うひゃー読むの大変そう・・と、いつもの通り私を凹ませておいて、
読み始めたら最後、どんどん文章に引き込まれていって、
最後まで気持ちよく読み切らされちゃうのです。
まじ、惚れます。

うわー、本当に嬉しいです♪

ブログを書くときも、ただの日記で終わらないように、
読みやすいように…って考えてます。
最後までちゃんと読んでもらえる文を書くことが、
とりあえずの目標だから、本当に嬉しい。

まだまだ稼げてないけれど、
めげずに続けるぞー!っていうパワーになりました。
ありがとう!

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