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恩師

高校のときに出会った恩師と、仕事をしました。

***


私には、恩師がいます。ここでは仮にT氏としましょう。
出会ったのは、高校1年生のとき。

担任の教師ではありませんでした。
教わったのは、地理を1年、世界史を2年。

けれど、単なる学科を担当した教師に対しては、
恩師という単語を使用したりはしません。


T氏が私に教えてくれたこと。
それは、

ふいに思い出すと元気になれるような、
書こうとして言葉につまり、涙がにじむような、そういう、
途方もなくキラキラしたものでした。
懐かしい、とは思いません。
現在進行形で、その影響が生きているから。


本を読む楽しみ。
…私がそれまで知っていた「面白さを求める読書」とは違う、
知的好奇心を見たす読書というものを教えてくれました。
私は、今に至るまであれほど魅力的な趣味的蔵書を書庫に揃え、
しかもすべてを読んでいる人間を知りません。圧倒されました。


人と語る楽しみ。
毎日、T氏の家で、仲間数人と、遅くまでいろいろなことを話しました。
これで思想的に偏っていたら危ない先生ですが、
そうではなくて、本当にくだらないことを…
目の見えない人の走馬燈ってどんなものだろうね、とか、
詩人の詩にメロディを付け合うとか、
そんなヨタ話について、そこではいつまでも話していられました。


創作姿勢への厳しさ。
人に見せるからには自己満足だけでできていてはいけない、
サービス精神というものを教わりました。


スタンリー・キューブリックとフェリーニとフランス映画。
これらはカンペキにT氏からの財産です
映画について膨大な知識があったT氏は、
映画を作成する我が部活を利用して自分の映画ばかり撮ってましたが、
そこに参加することは驚きと刺激の連続でした。


学校に行く楽しみ。
大嫌いだった学校、中高一貫教育だったあの学校で、
あのまま恩師に出会えなければ、私は呼吸困難で死んでいた。
でも、地理の授業で質問されたことに何気なく答えた私を
T氏は拾い上げてくれました。「おまえ、面白いよ」と。

そして出会った卒業生、先輩、今まで顔を知らなかった同級生。
T氏の周りの人間たちには、求めていた空気がありました。


男子の話。芸能人のうわさ。グループの悪口。教師の愚痴。
テスト勉強をしたかしないか。洗練されていない、むくつけなシモネタ。


それらの、適当に相づちを打つ以外に方法のない無意味な話を
そこでは聞かなくてよかった。
誰に話しても「若崎さんって変わってるー」としか言われなかった
ドストエフスキーや魯迅、フランクザッパやチックコリアの話が、
そこでは「読んでいて、聴いていてあたりまえ」だった。
ニュースや競馬の話と同列に、自然に語られていて。

私は初めて「なにもわかってない高校一年生」としてあしらわれ、
のびのびしたリラックスを経験しました。


やがて某バンドを愛することで共通した彼と私は、
もうひとりの先輩と3人でバンドを始めるようになります。
メンバーは流動的でしたが、T氏と私は固定でした。
「仕事」のように、真剣に顔をつきあわせて音楽をつくり、歌詞を考える。
採点する方とされる方でありながら、その時だけは上下もなにもない、
純粋なクリエイションの時間でした。


(親は心配してました。妙なことになったんじゃないかって。
笑っちゃうほど今でも考えられないことですが、
全然関係ないながら一応書くと、
T氏はT氏で現在の夫人と恋愛中で、私にもカレシがいて、
だからって仕事には関係ないでしょ? そういう感じだったのです。
プライベートについて(勉強や友人関係を含め)話に出たことがありません。
繰り返すけど、バンドって、内側では音楽ばっかなんですよ。)


退屈で死にそうだった中学時代の記憶が、私には、ない。
カラー・オブ・ハートのように、世界が少しずつ色づきました。
彼は恩師なのだ、と思ったのは、高校を卒業したあとでしたが…。


映画が好きで、仕事の合間に映画ばかり作成していたT氏は
数年前に国際映画祭で華々しい賞を取って学校を辞め、
現在は映像製作会社を作って代表取締役を務めています。
もちろん、そのかたわら自分の作品を撮り続けています。


そのT氏から、仕事がきました。
クリスマスにテレビ放送される特番の、ミニドラマの脚本です。

挑戦的な台詞に発奮しながら、必死で書きました。
「70%程度しか使えないねえー」 なにくそ、と思い、
「書き直してー」 と言われては睡眠時間を削り、
「追加で1本、明日まで」 という注文にも 「できません!」 とは言わず、
黙々と取り組みました。


現在、仕事が詰まっていることもあります。
時間がいただけなかったこともあります。脚本なんて初めてだということも。

だけど、いいわけはともかく、…最高の出来ではなかった。
全部、じっくり考えて、書き直したいくらい。
100%にするよりも、85%で納期に沿う方を選んだのです。


本日、すべてを納品して、そして、恩師からメールがきました。


 「火急にもきちんと対応できる君は、プロですね。
 いや、しっかり成長されてある、嬉しいです。」


先生。


違うんだよ、私はなんども悪態をついたよ、
明日迄なんて無理に決まってるだろコンチクショーってわめいたよ、
しかも70%しか使ってもらえなくて悔しくて悔しくて、
時間がないのが悪い! とか先生のせいにしたりもしたよ。


でも、でもよかった、やってよかった、
誰にでも書けるようなルーティン仕事にウンザリしてたときに、
新しいことができて、初めて脚本なんて書かせてもらって、
すごく夢中になれて、難しいけど楽しくて楽しくて、
だから、だから、ありがとう、先生。


やっぱり先生は恩師だ。


恋人同士には別れがあるし、友人とは仲違いをするけれど、恩師は恩師。
細々とした、しぶとい繋がりを先生と持てて、よかった。

来月、帰省したら会いに行きます。


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