« 終わりの日まで、飛び跳ねる | トップページ | どうにか、いちどは »

トマトパスタをひとりぶん

 
土日は朝から草野球 → 飲み会。

平日は朝から晩までお仕事で、夜は飲み会や麻雀やいろいろ。

とくに転職前の今は、毎日毎日毎日、飲む予定が入っていらっしゃる。
そうでなくても、留守傾向は、ここ数ヶ月、加速中。


そんな王子様と暮らしている地味な自由業者には、
たまの取材や打ち合わせ以外に、人と会話をする機会がない。


友人が多いのは男としてはいいことだろうし、
私だってポーンと長期旅行で家を空けるから「行かないでよー」 なんて
言えた義理じゃあないから言わないんだが、どうにもひとりを持て余すこともある。


私の友人たちは、みんな固い業種のサラリーマンだから、
誰かとご飯を食べるといったら夜に酒を飲むことになって、
長っ尻を覚悟できるときしか会えない。出費の上でも、頻繁には誘えない。


でも、まあ、食わねばならん、今日は土曜、昼食は一日の活力のもと。

パスタをゆでるための湯をわかす。にんにくとトマトを冷蔵庫から……。

うーん、張り合いがないなあ。携帯電話をつかむ。

「もしもし、ショーコちゃん、今からうち来ない。お昼食べよ」

ショーコちゃんはヒルズOLで、仲良しのかわいい女友達だ。

「いいな、行きたい、なに、今日はパスタ?」

この人、うちのメニューをよく当てるのよね。バイオリズムが似てるのか。

「でもごめん、土曜出勤中。
もうね、むなしいわー、ヒルズなんて遊びに来てるカップルばっかりよ」

私もむなしい。

「王子様はどうしたの? なんかいつもいないね」

そうね、いつもいないわね。
しょうがないよ、じっとしてる男じゃないもん。
しょうがないよ、そゆとこも好きなんだから。 で、何人かに電話してふられる。

サラリーマンのみなさんにとって土日ってのは貴重な貴重な週末で、
前々から予定が入っていらっしゃるものなのだ。

で、いつもヒマこいてる親友Mくんに電話。

「もう食った、カルボナーラ作ったんだぜ、30分遅かったね」

Mのカルボナーラうまいんだよなあ。
私は、Mくんちに行くとき食材を持ってくことにしてる。あさりとか、牛肉とか。
ブツブツ文句いいながら、手早くステキに料理してくれるんだ。プロ級なの。


Mもダメか。
あーでも誰かとしゃべりながらご飯食べたいな。
で、「平日要員」である唯一のライター友達O田さんに電話する。

「O田さんO田さん、ご飯食べようよ、新宿までなら出てもいい」

もうパスタの湯は捨てる構えで。

「無理、俺いま北海道なんだよ、S木もいっしょに」

がくっ。そういえば言ってたなあ。
S木さんはフリーの編集者で、O田さんと同じく42歳で、
3人の女に7人の子ども産ませて、大変だ大変だって働いてる楽しい人だ。

「ここ数日、レジのお姉さんとインタビュー相手としか話をしてなくて。
プライベートがひとりぼっちなんだよ、滅入っちゃいそう」

「じゃあ北海道来れば。撮影でまわってるから、再来週の半ばまでいるよ。
来てくれれば手伝いを頼むよ、バイト代くらい出すよ」

きゃーっ、いくいく、ちょっと待ってね仕事確認する、……。

「ダメだあ、なんか飛び石みたいにぽつぽつインタビューが入ってる。
一泊だと航空券がもったいないしなあ」

「ご愁傷様、みやげにトドのカレーを買ってくよ」

そんなのいらないから早く帰ってきて。

というセリフを、友人には言えて、王子には言えない。間違っとるよな。


だって、うっとうしい、帰りたくない、って思われるのが一番こわいじゃない。

とりあえず、寝る前の30分くらいは顔が見られることもあるわけだし。
いっしょに暮らしてるなあ、っていう感じは、しないわけじゃないし。




湯布院の旅行はひさびさにゆっくり二人で過ごせて、ホント楽しかった。
あまり会えないから、話題なんかいっぱいあるもんね。

復路で羽田空港に到着したとたん、

「ごめんね」「今から? 遅くなるけど…」「待っててくれるなら」

なんて、私がトイレ行ってる間にどこかと途切れがちにヒソヒソ電話したあげく、
(最後のほうこっそり聞いてしまった、悪気はなかったの)

「ちょっと会社の人と飲むことになって……」と、そのままどっか行っちゃったけど、
で、夜中の3時すぎまで帰ってこなかったんだけど、

最近、本当にろくに帰ってこないのって、それって、あの、
ひょっとして今回の旅行は私への罪ほろぼしかなんかだったりする?


なんて、邪推はぎゅうぎゅうと押し込める。


クロだったとしても、どうせ私は許してしまう。
だったら、追求したってしょうがないと思いません?




携帯が鳴る。ショーコちゃん。

「ちょっと元気、ご飯食べた?」

「まだ」

「あんたねえ、元気だしなさい、明日にでも買いもの行こうよ、秋もの」

昼休みにかけてきてくれた。うれしい。ショーコちゃん、愛してる。

「ショーコちゃん、あのねえ、私ね、さびしいみたい」

「わかってる」

「さびしいよ」

「私だってさびしいわよ、ケースケのやつ、また出張なの。
ね、だから買いもの行こうよ、かわいいの買おう、女の子っぽいやつ」

「うん」

「あしたね」

「うん、ショーコちゃんもお仕事がんばって」


大鍋の湯が、ぐらぐら煮え立つ。パスタを入れる。
フライパンにはオリーブオイルとにんにく。香りが出たら、トマトをつぶす。

おなかが満たされると、気力が天から降ってくる。


ひとりだって、おいしいものはおいしくて、これでじゅうぶん、
私はまた元気にやっていける、という気がする。

明日になれば、ショーコちゃんとお買い物だ。
明後日には尊敬するデザイナーさんとこにインタビューに行ける。どきどき。


幸せじゃないか、じゅうぶん。


「こないだ、旅行の帰り、そのままどこに行ってたの?」

今なら聞ける気がするんだけど、王子様はもちろん、夜まで帰ってこない。


« 終わりの日まで、飛び跳ねる | トップページ | どうにか、いちどは »

03_ うちゴハン(レシピ)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64666/11915956

この記事へのトラックバック一覧です: トマトパスタをひとりぶん:

« 終わりの日まで、飛び跳ねる | トップページ | どうにか、いちどは »

プロフィール

2016年7月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

オススメ



最近のトラックバック

カウンター

無料ブログはココログ