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ショートソング

 

気づくとは傷つくことだ 刺青のごとく言葉を胸に刻んで (枡野浩一)


集英社さんから文庫本が届きました。
歌人・枡野浩一氏の新刊「ショートソング(集英社文庫)」。
冒頭の歌は個人的にタイムリーで、何度もしみじみ読み返したものです。


「ショートソング」は、枡野氏の歌をはじめ、大勢の方たちの短歌が
あちこちに引用されているラブストーリー。
私が「枡野浩一のかんたん短歌blog」に投稿した歌も
ストーリーの中に一首採用されたので、謹呈をいただきました。
巻末に「若崎しおり」の名前とともに自分の歌が載っていて、うれしい。

私の投稿歌は、
「最後まで汚い嘘をつき続け きっとこの人あやまるつもり」
けっこう激越な場面で使われていました。
…確かに、激しい罵りの歌だなあ。何があったんだ、このときの自分。




ちなみにショートソングに引用されている短歌の中では

今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて(佐藤真由美)

という作品が好きでした。女にしか詠めない、論理の破綻のスゴミ。
まんま短歌にしている冷静さも好きだ。さらりと暗記できるし。


私はこういう発想がないから恋愛に弱いのだろうと思う。
「こんなめちゃくちゃは、美学に反する」なんて思っちゃう人は…負けるよね。

欲しいものは、欲しい。
と、なりふり構わなかったことなんて、私にも、あったかしら?


佐野洋子さんのエッセイで、三角関係になった友人の描写があります。

《「相手の女が出刃包丁持ち出して、男を寝かさないのよ。そういう最低の女
なのよ」
(中略)
「あなた、嫉妬しないの」
「それはあるわよ。でも私、そういう形でしっとをあらわすの知性の問題だと思う。
私の美学が許さない。電話がじゃんじゃんかかって来るの、ヒロシはわたしの
ものだって。人間にそんな権利ないはずよ。あの人を追いつめるだけよ」
  私理由はわからない。でも、ああみよちゃん、あなたの負けよ、出刃包丁が正
しい、あの人は私のものだって追いつめるのが正しい、たとえそれで男を失った
としてもその女が正しい、この正しいというのは正義というのではない。恋愛に
「権利」などという言葉を持ち出すみよちゃんの負けだ、と何かが私に教える。
(中略)人と人が生きるってもっと抜きさしならないところに追いつめられて追い
つめて、追いつめる自分の醜さに耐えて、あたふた楽な方に逃げようとする相
手のずるさを出刃包丁でさし殺すことではないのか。(中略)出刃包丁の女が、
たとえ倒れても、私はやはり出刃包丁の女が羨ましい。》

たぶん私は永遠に出刃包丁の女にはなれず、
キャラメルコーンを買うか妻と別れるかを迫ることもできず、
美学とやらで自制するうちに、こういう女たちに男をかっさらわれて、
歯がみする立場でありつづけるのだろうなあ…。

そんなことに思いをはせる短歌でした。キャラメルコーン。

これはもう、生まれつきなのでね。ひりひりするくらい、羨ましいよ。




***




朝から、友人ショーコちゃんと電話。
ショーコちゃんはOLで、でもいま入院中だからヒマしています。

…という事情はわかっちゃいるが、こちらのテンションの問題もあり。

無理してる自分の無理も自分だと思う自分も無理する自分(枡野浩一)

さっさと切り上げようとしたら、いつもの横柄な調子で(ショーコちゃんは
ドSな女王様気質なのだ)、切るなよ! と命令された。ううう。

「ありゃ? 若崎ちゃん、なんか落ち込んでる~?」
女王様は下僕の体調に鋭い。
「ちょっといろいろあって、自己分析→自己嫌悪の無限ループなのよ」
さらりと答えて話題を変えようとしたら、間髪を入れず絶妙なタイミングで、

「えっ、なんで? あんたってイイヤツじゃん!」

シンプルな一言に、絶句してしまった。

「バカみたいにくそまじめで、バカみたいに底抜けのお人好しで、
ホントにイイヤツだと思うわよ、あんたは。つまんないけど。
反省するなら、他に取り柄がないことを反省なさいッ!」

たたみかけられて、笑ってしまう。すごい。ショーコちゃん、君は完璧だ!

ショーコちゃんは、信じられないくらいイジワルで、イジワルを言わせたら
相手が一番言ってほしくないことを、ごく少々の材料から察知して
ズバン! とクリーンヒットさせちゃうのね。
男の子なんて、それですぐにボロ雑巾みたいになっちゃう。

でも、それを逆用すれば、理由なんか言わなくても本質を見抜いて、
ほんの一言の応酬でズバッと励ますこともできるんだ。

天性の才能だと思った。

「…ショーコちゃん、ありがとう。なんか今、無限ループを出られたよ」
「じゃ、なんか面白い話して。なかったら小説を朗読して! 退屈なの!」

お礼に、ウーマンリブ先生のストーリーを、小ネタまでもらさず細かく説明して
あげました。大いに笑ってくれて、よかったよかった。

ショーコ女王様が、今日の私の神さまです。あーもう涙が出たわ。


ちなみに昨日の神さまは、
ポストの上になぜか置かれていた1個のピーマンです。
無傷なのよ、これが。生で、ツヤツヤしてて、作りものみたいなのよ。
不可解さとピーマンのもつ「まぬけ」な磁場で、がっくり脱力。ちょっと笑えた。


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コメント

キャラメルコーンの句はすごいなあ。自分では逆立ちしてもひねり出せない論理展開だ。でも、出刃包丁の方が正しいってのは、論理的にもよく分かります。みよちゃんの物言いに魅力を感じないのもまた事実。

酒徒さん

私もあの歌には異次元の魅力を感じました。
でもこのくらい無茶なほうが、関係の展望について
淡々と責められるよりいいかもですね、やさしさかもですね。

恋愛という「どうかしてる」場面では、
「どうかしてる」方が正しいのかもしれません。
まあ、普通にまわりの迷惑だとは思いますが(笑)。
 

なるほど、確かに淡々と責められるよりはよほどいい。でも、キャラメルコーンを素直に買いに行ったら許してもらえるのかどうか(笑)。こういう話は、第三者として笑える立場を望みます・・・とか言ってるのがダメなのかもしれないですね。

酒徒さん

修羅場って消耗しますからねえ…得るものも少なそうだし…。
おとなしく伴侶を大切に生きていきましょう、おたがい。

18BY新酒シーズンにむけて早くも気がそぞろです。
火入れ熟成した旨味のある酒が好みですが、
おりがらみ生のフルーティーさも、あれはあれで素敵。
ボジョレーよりよっぽど胸がおどります。
 

うらやましがらせようったってそうはいきませんよ!僕には日本で買ってきた冷やおろしが五本あるし(あ、もう二本か)、昨日は日本の友人から更に二本の差し入れが届きましたもの!

とむきになってみましたが、ボジョレーより興奮ってのには大いに賛成です。僕も熟成派ですが、生は生でこの時期は飲んどかなきゃって気になりますね。

酒徒さん

コメントスパム多いので、承認しないと反映されないようにしたのです。
何度も投稿させてごめんなさい。

しかし、あの大量の仕入れが、もう2本になりましたか…
今頃、あとかたもないんだろうな…(^^;。

今日は中華を作ったので、紹興酒を飲みましたよ。
私は蒸留酒がちょっと苦手なので(アルコール度数が高いものを生で飲むと
胃がギリギリ痛むのだ。焼酎は湯割りできるから可)、
白酒より黄酒が好きです。
紹興で紹興酒を飲むという夢を、来年くらいには果たしたいなあ、
なんかやたら高いんだもん、デパートで買う紹興酒って…。
 

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