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春ですものね

 
トーストをくわえて角でぶつかって始まるような恋がしたくて (若崎しおり)


***


午前中、友人のショーコちゃん(仮名)から電話。

 どうしたの、OLさんがこんな時間に珍しい。
「会社休んだの」
 なんで? 具合わるいの?
「恋わずらいで」
 そらまた、はた迷惑な。
「ウソよ、代休。
でもね、今度はホンモノ。年下なの、かわいいの、恋しちゃったの」
 恋かあ、春だねえ……。
「いいかげんな返事しないでよ季節は関係ないでしょ、
どんな人なの? って聞きなさい」
 相変わらず女王様なのであります。今度はホンモノ、というその台詞、
 ここ5年間でどれだけ聞いたことやら。という言葉は飲み込んで、
 すみません、どんな人なんでしょうか。
「かわいいの!」
 さっき聞いたよ。あほか。つまりあれね、ノロケたいだけなわけね。
 相づちをうちながら本棚なんか整理しはじめちゃう。マンガ増えたなあ。
「ちゃんと聞いてよお、友達がいがないわねえ」
 友達だから切らずに聞いてやってんだっ!
 しかしまあ、うらやましいですよ。ひさしぶりに恋でもしたいですわ。
「どんな恋?」
 トーストをくわえて角でぶつかって、思いがけなく出会っちゃう恋だよ。
「あははは! それ、いいね!」
 ちゃんと前を見なさいよ! そっちが飛び出してきたんだろ! とかね。
「そうそう、最初はナニヨコイツ、とか思うのよね、王道よね」
 そしたら次に駅のホームでばったり会って、コンタクトを落とした人に
 つきあって、必死で探してあげてる姿をみちゃったりする。
「意外にいいヤツかも、なんてキュンとするところから始まるのね。
彼が着てるのはオーソドックスな詰め襟の学生服がいいなあ私」
 じゃあ主人公はブレザーで。
 パンツ見えそうなやつじゃなくて、普通のスカートでお願いします。
「フレッシュなサラリーマンと駆け出しOLじゃダメ?」
 そのときは、取引先でばったり再会しよう。
「ばったりが基本なのね」
 そりゃそうだろう。で、最初は素直になれなくて。
「憎まれ口ばっかりたたいちゃったりするのよね」
 でもいざというとき助けてくれて。
「ひょっとして? とか思い始めるのね。青春ね」
 もちろんふたりとも、それが許されるくらい容姿は良いわけです。 
「当然独身でね。ダメじゃない、いろいろ」
 まあ、そうね。
 でもさ、そんなこと言ってたらさ、角でぶつかったって、あ、すみません。
 ってなもんなんだから、日常なんて。
 身近な工夫で、無理くり非日常を呼びこまなきゃいけませんよ。
「なによ、どうすればいいの?」
 まず、トーストをくわえて走ってみる!
「あははは、ばーか」
 そういう地道な努力を怠ってるから恋が降ってこないんだな私には。
「うふふ、そういうことにしといてあげるわよ、私は幸せだもんね、
かわいいのよ彼、ショーコさんみたいに綺麗なひと見たことないって言うの」
 くそっ、話をそらしたと思ったらもどってきてしまった!

きらきらした声をたっぷり聞いて電話をきった。
出会いと別れの3月か。あんまり関係ないけどさ。
今度はホンモノが、今度こそ本当だといいね。お幸せに!



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