« さよなら、ジョギングロード | トップページ | 忙しグルグル »

追悼:時実新子

 
3月10日に時実新子さんがなくなりました。享年78歳。

私がそれを知ったのは、3月末。
ずっと心のどこかが喪に服している感じがします。


触れれば血の吹き出るような句の数々。好きな川柳ばかりです。
とくに、句集『有夫恋』は、折に触れいつも読み返しては、新鮮に、痛い。

もしご存じないかたがいらっしゃれば、この機会にどうぞ、
句集を買ってみてください。


 ふたたびの男女となりぬ春の泥


 五月闇生みたい人の子を生まず


 はなれ住むただ長生きをして欲しい


 孤独ではない恋人を見た孤独


 人の世に許されざるは美しき


 自らを削るほかなき思慕である


 墓の下の男の下に眠りたや


 明日逢える人の如くに別れたし


 憎いその腕(かいな)の中で敗けてゆく


 心奪われ阿呆のような日が流れ


 愛咬やはるかはるかにさくら散る


 れんげ菜の花この世の旅もあと少し


 親は要りませぬ橋から唾を吐く


 妻をころしてゆらりゆらりと訪ね来よ


 手が好きでやがてすべてが好きになる


 男の嘘に敏感なふしあわせ


 去ってゆく足に乱れのない憎さ


 ののしりの果ての身重ね 昼の闇


・有夫恋(角川書店)
・新子聚花(朝日新聞社)
・時実新子全句集 1955‐1998 (大巧社)



* * *


時実新子を読むと、歌人の佐藤真由美の歌を思い出します。
詩を歌う者としての格は、ぜんぜん違うのですが。

佐藤真由美が歌うのは、時実新子ほど激越ではなく、
若い女の、もっと日常的でポップで身近な、口語体の恋心。

なのだけれど、
女の生理にヒヤリと触れる感触が、少しだけ似ている気がするので。


 やれそうと思われたのは悔しいが事実やったんだからまあいい

 つまらないセックスをした翌月に生理が来たら「おめでたですね!」

 今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうでなければ妻と別れて

 死ぬことの決まった人の世話をするように笑ってばかりいた恋

 読んだらと言われた本を探してる 恋したわけじゃないけれど まだ

 無理すれば週末デートできるのに もう無理しない自分に気づく

 鎌倉で 猫と誰かと暮らしたい 誰かでいいし あなたでもいい


女の人は眠れぬ夜に。 男の人は女心の研究に。
ぜひ買ってよんでみてください。おすすめ。

・恋する短歌(集英社)
・プライベート(集英社)
・恋する歌音(カノン)―こころに効く恋愛短歌50 (集英社)
・きっと恋のせい(マーブルトロン)


« さよなら、ジョギングロード | トップページ | 忙しグルグル »

05_ 映画・演劇・書評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/64666/14556577

この記事へのトラックバック一覧です: 追悼:時実新子:

« さよなら、ジョギングロード | トップページ | 忙しグルグル »

プロフィール

2016年7月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

オススメ



最近のトラックバック

カウンター

無料ブログはココログ