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(書き直し)ただいま帰りました

 
ただいま、11日間のキューバ旅行から帰ってきました。

1日だったら、キューバに辟易してたかも。
3日だったら、判官贔屓で無条件に愛したでしょう。

5日を過ぎたあたりから愛憎なかばして、今もキューバのことを考え続けています。


はじけるような笑顔の、人なつこい人たち。
…の見せる、小ずるさ、子どもっぽい我執、偽善、二枚舌。


ハバナ・ビエハの「観光価値のある」世界遺産の景観を形成する、
骨董品のようなコロニアル建築。
…は、実際に人が生活をする住居で、その中では修理されないままの
インフラが、機能を少しずつ止めながらゆるやかな死へと向かっている。


くるくると上手に楽しげに踊っては手をさしのべてくる若者、
体ぜんぶを使って音楽を奏でる迫力のミュージシャンたち、
街路のあちこちには、暇を持て余した陽気な人々が、とくに理由もなく
「ヘイ、チーノ!」と声を掛けては手を振ってくる。
…かと思えば空港のカウンターで、ホテルのロビーで、スーパーのレジで
たたきつけられる、驚くほど人間味のない、木で鼻をくくったようなあしらい。


単純に好きか嫌いかを言えば「とても好きだ」と感じる国なのです。
北欧で感じたような排他的な冷たさ、異文化の中にいる緊張感もなく、
インドのような「毎日が物売りとの戦い」という疲労もない。
私は毎日、無心に遊んで三食をおいしく食べ、やすらかに眠りました。


筆を洗わないままに水彩絵の具を載せていったようなハバナの街並みの
雨に濡れた風情、街灯に浮かぶ夜のなまめかしさを、単純に美しいと思いたい。
辻に漂っている排泄臭や腐臭、巻散らかされたごみ、ほじくりかえされた道路
まで含めてまるごと、傍観する旅行者として無心に愛してしまいたいのに――。


16世紀のスペイン侵攻、19世紀のアメリカ統治、革命で真の独立がなされた
あとも何度も政策の転変に翻弄されてきたゆえのことなのでしょうか、
歴史ある建造物があって、観光にも事欠かなくて、だけど音楽以外に
「成熟したもの」を感じられなかった。

ことあるごとに、そこに引っかかっては溜息をつき、苦笑し、苛立ち、
ケンカすることになる。

抽象的な概括になってしまいましたね。
具体的には、日記の中で、(同行者の迷惑にならない範囲で)
書いていければいいなと思っています。


***


今回は日数も少ないし、詳細な旅日記をアップしようと思っていたのですが、
最後のカンクン泊で、日記メモをホテルに忘れてきてしまった。
気づいたときの、ガチョーンな気分といったら……。


同行のみなさんにモーニングコールをする際、全員の部屋番号を記していた
そのメモ帳を電話機の横に置いたのが運の尽き。
出発前に、洗面所とかライティングデスクは確認したのになあ。
現在、問い合わせ中です。無事に戻ってくることを願うのみ。


まあ、帰りの機内で同行のオーヤマさんと「答え合わせ」をするように
日々の行動を復習したし、印象をつまみぐいするようにアップすることは
できると思います。


明日から、ぼちぼちと。


***




成田空港に到着したときは、ちょっとだけブルーでした。
王子様は私と入れ替わるように、現在、中国に出張中。

たくさん、たくさん話したいことがあるのに、帰国しても1週間以上、ひとり。

「ただいま!」っていう相手がいないのでは、帰宅する張り合いがありません。

あーあ。カストロさんが急逝して空港閉鎖、どうしよう帰れないっ!
っていうハプニングでもあればよかったのになあ。

なーんて、気が弾まないままに、ガラガラズルズル旅行かばんを引きずりつつ、
未練タラタラ、成田エクスプレスから山手線へ。

洗濯物と、おみやげと。
かばんに入っているのはせいぜいそんなものたちのはずなのに、
旅の疲れがみっしり詰まっているような、憂鬱な重さです。

出発するときは、同じかばんに、ぴかぴかの着替え、手つかずの本たち。
まったく苦にならない、軽やかな重さだったのになあ。

で、我が家に到着。
郵便物を確認して、おお、山椒が成長している、パセリもいい感じに茂っているし、
王子、ちゃんと世話してくれていたんだ、と植木たちの無事にほっとして。
かばんのあちこちをゴソゴソしてカギを探して、玄関をあけて、よっこらせ、と、
家の中にかばんを押し込んで、おや?


玄関に一枚の紙が置いてありました。
フォントサイズ9のゴシック体でみっしりと印刷された文書です。王子だ……。


私は旅行に行くと鉄砲玉で、仕事や家族、恋人のことがスポーンと飛びます。
今回だって王子には、初日「ハバナに着いたよ」の一本しか電話しなかった。

ひょっとして激怒してるんじゃないか、三行半じゃないのかとヒヤリとしちゃって、
靴も脱がずに立ったまま読みはじめました。


《しおりちゃんへ。

キューバの長旅おつかれさま。
これを読んでるということは、無事に帰ってきてくれたんだね。
どんなおみやげよりも一番うれしいな。

旅程表を置いていくけど、今回の出張はこんな感じ。

  ~中国での行動と、同行者についての説明、連絡先~


あと、しおりちゃんが留守の間は、こんな生活してたよ。

08(金) 仕事、帰ってきてビール、トイレ掃除と部屋の掃除。
   あ、16日にも掃除したんだよ。クリーニングも出しておいた。
   しおりちゃんがNくんにもらったメロンの子ども、余ってたからT先輩にあげた。
   おいしいってよろこんでた。自分でもけっこう食べちゃったよ。おいしいね。

09(土) Kと釣り。小網代。昼頃あがって寿司屋でお昼。
  帰ってきて、釣った魚で天ぷらなどつくった。K泊まり。1Fに寝た。
  (洗濯物とかはちゃんと隠しておいたからね!)

10(日) またKと釣り。小網代。雷雨が来たので1時間で終了。
   お昼、中山のラーメン屋に行こうとしたら休みだったので、
   調布のらいおんへ。開店前だったので釣りの格好のままKの
   買いものにつきあった。
   そこで、かわいい傘立てを見つけたよ。しおりちゃん、欲しがってたでしょ、
   今度、いっしょに見に行こうね。
   帰ってからひとりでキスの天ぷらつくった。あとイシモチを塩焼き。
   はやく、しおりちゃんの料理が食べたいよー。

11(月) 普通の日。仕事帰りに中延でおりて、荏原のカレーやさん。
   ぜんぜん遊ぶ気がしないよ。しおりちゃんがいないと何も手につかなくて。

   ~以下、16日の出張出発まで日記が続く~

・メモ
しおりちゃんは忘れっぽいけど、できればゴミ捨ては忘れずによろしく。
火曜が燃えるゴミ。水曜が不燃ゴミだよ。
旅行でぜんぶ使っちゃっただろうから、お金が足りなくなったら俺のカードから
下ろして好きなだけ使って。留守の間の郵便は………(以下略) 》


おしゃべりするように記された、日本にいる王子の毎日。
愛情深い王子の人柄のままに、声が、表情が、そのままそこにあるようで、
涙がどんどん、どんどん滲んできて、最後まで読むのに時間がかかってしまった。

いま王子は家にいないけど、ここは確かに王子と私がいっしょに暮らす家で、
だから私はここに無事に帰ってこられてよかった、すごくすごくよかった、
この人を悲しませたり、心配をかけるようなことにならなくて、本当によかったんだ。


ハプニングがあればよかったのに、なんて思って、ごめんね。

ただいま!
誰もいない玄関で、心から思いました。




追記:
 何を書いてもノロケになるのは、このブログの特徴です。ケッと思った方、

 いいかげん慣れましょう。



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コメント

おかえりなさ~い お疲れ様 読んでてなんかすごくあったかい気持ちになっちゃいました はやく王子が帰ってくると良いね

吉崎さま

ただいまです、ご愛読ありがとうございますっ

自分は鉄砲玉のくせに、相手が出張だと、無事が気になって心配です
「電話くらいしてよ」とか思っちゃいます 身勝手ですが(^^;
 

のろけと言われるまでのろけとは
気付きませんでした(笑。

旅行記、色んな観点から綴られていて読み応えのある
文章だなと、興味深く思いました。

後、王子様のメモ。
そこで涙、滲みました。
私もそんなのろけをブログに書ける
相手がほしいなぁって、心底から思いました(汗。
まあ、まだ、赤い糸には辿り着いていないって
ことだと思って(あくまでもポジティブに)

ユリさん

わあ、昔の日記を読んでいただいてうれしいです、ありがとうございますっ(≧∀≦)♪
キューバはホントに、旅行するにはいいとこでした。ごはん美味しくて、遺跡があって、青い海があって、陽気な人たちがいて。

王子もすっかり私が飛び出すことになれてしまって、
今ではこんなメモなんか残してくれません(泣
新婚時代は終わってしまいますねえ(苦笑

赤い糸って、きっと何本もあるんですよー。
1本の糸をだいじにするのも素敵だし、晩年に赤い織物を織れるくらいいろいろ思い出して楽しむってのもいいな…なんて思っちゃいますwww


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