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手紙

 
この場所をどうにかしたいと思ったことはない
あきらめがいいねと小さな頃から言われて
それは全力を出せばすべてがうまくいくと
無邪気に信じてさぼっていたような妙な感じで
たとえば右足をだしたら左手がでるような
必然で運命的な でも少し自由意思のような
空気の中で生きてきたのだと思う


あなたと出会ってあなたをどうにかしたいと
もがけばもがくほど小さく小さくなってしまった
世界と自分の境目はこんなにも薄い皮膚なのに
液体同士がまざりあうように不満は溶け合わなくて
一緒にいるの一緒というのはいったいどういう意味
真剣に言葉遊びを繰り返して一日や一晩が終わることもある


そうしてなにか純粋で汚い焦燥の断片が
こうして綴られていつかあなたのもとへ届くならば
婚姻届ひとつで済んでしまう結婚とはなんて簡略で
罪のない制度なのだろうと改めて考えた
壊すことと作ることは作ることの方が大変だ
というのは本当なのだろうか最近は疑わしい
壊すことの方が労力を使うことだってあるのかもしれない


メールを待っている自分がとても嫌いだったり
仕事をするときの空洞になったような胃のあたりが
慣れてしまうと楽な感覚だったり
ほんの一年で沢山のことを知り忘れ繰り返した
濃度のあるそして単純でたぶん起伏のない時間を
選び続けることが働くということで
あなたを好きだと思う気持ちで全部は塗りつぶせない
時間がないとはそういうことなのだろう


嘘をつかなくなった小さな嘘はつくけれど
大きな嘘で誰かを欺くことはしたくない
大人になって痛みから立ち直るのがずっと
難しくなってきたからだろうか
ただ人をいたわるような嘘は増えたかもしれない
それを嘘にはカウントしないことにしている
嘘という言葉は強い言葉だからなにもかも嘘にすると
自分にも他人にも失礼になるような気がしている


ゆっくりしたいと思う できればあなたとがいい
どのくらいの期間かと聞かれてもわからない
満足するまでゆっくりしたいと思う
数日でお互いに仕事のことが気にかかるだろうから
様子をみながら臆病に一日ずつ大事に優しくしあって
ゆっくりしたいと思うそれならば
あなたとがいい


そういえばいつか旅行に行こうよと約束したまま
どれくらいの月日がたったかとふと思った
これを嘘とはよばないやっぱり約束だから
死ぬまでには果たしてほしいと今も諦めていない
やっぱり待つ人がいると家を空けられないねと
しめくくるけれど問題は実はそんなところにはなくて
見ないふりをして わかっているけどうやむやにして
だけどそれを嘘にはカウントしないことにしている


さ と気合いを入れ直して仕事に戻るけれど
二週間前の思い出の顔じゃ元気は出ない
盗むように時間をおし戴いて今週は会いたい
いつか旅行にいこう一緒に住もうどんな家がいいかな
なんてくだらない話をベッドの中でまたしたい
そういうのは嘘とは少し違うと私は思っているから
限りなく空腹に似た言葉を悪びれずに贈ってあげたいと


柄になく切実だからこうして手紙を書いている
週末 空けておいてくれると嬉しい

















***
ずいぶん昔の詩ですが、気に入っているので、再録してみました。
 

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