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愛について 2編 (改稿)

 
             1


     はてしないものに背を向けて
     今を生きたいと願いながら

     はてしないものにこそ私たちは
     焦がれ続けている


     そうして

     そうして私は今日も
     たよりないなにかを拾って歩く


     いつも同じように見えて
     少しずつ 違っている歩幅程度には
     日常は手に負えない裏切りをどこかに
     隠し持っていて


     傷ついたあとの言葉しか結局わからない
     あなたにも
     わたしにも


     いつか私はあなたを忘れる
     いつかきっと私はあなたを必要としなくなる
     私はこのさき何十年もおそらくは生きてしまうから

     あなたと同じくらい好きになれるひとに何人も出会う
     あなたの顔を忘れてしまうくらい痺れる出会いが訪れる
     わかっている わかってしまう程度に私もまた
     若くはない それでも私は
     生きてしまう


     針の先ほどのずれが いつか
     歩幅のリズムをひずませて
     はるかな距離に開いてゆく

     もう やがて 会えなくなるのだし


     となりにいる今くらい
     手をつなごう


     惜しんだものが風化して痕跡すらなくす前に
     呼べば振り向ける近さにいることが
     失われたお伽噺の一節になってしまう前に


     そう遠くはない未来にあなたはきっと
     私を忘れる
     あなたはきっと私をすぐに必要としなくなる
     私と同じくらい好きになれるひとなどいくらでもいるでしょう
     私の顔を明日にはもう思い出すこともないでしょう
     わかっている そんなこと
     わかっているから


     きらきらしく豪華な乾杯のシャンパンよりも
     着信履歴のフィクションよりも
     耳朶をひっかいてすべりおちる残酷な言葉よりも
     周到に用意されたすべてのすべての思い出たちよりも いま


     つないだ手から伝わるものだけを
     奇跡と名付けたい




                2


     それでもごめんわたしはあなたの
     芯に触れたい
     やみくもに掘り当てた鉱石の堅さより
     その内側のやわらかい分子運動に触れたい
     同じようにあなたのその動き続ける
     さだまらないところ 熱を発するところ
     あなたを生成し捏造するその そこに触れたい

 
     生まれたことがなにかの前触れならば
     それを超えることでわたしはわたしを
     自在な地点へ生かしてゆきたい
     反発する魂に逆らって
     流れてゆく同じ向きの時間を走行するのは
     もはや個人の集合ではなく
 

     溶解した甘さをしたたり流す その
     優しい言葉を分解し音声だけを愛したい
     音源の震え 振動の愛撫を伝えてゆく
     空間をいただいて回転する地球を感謝していたい
     小さな命として それは小さな熱源として
     分解に向かうエントロピーを慈しみ続けたい

 
     もはやその愛はあなたをそれて
     見晴るかす宇宙の奥にまっすぐ飛ぶ彗星のように
     すべてをつつみ撫でて去る春の風のように
     はぐくみを諦めて散るくちなしの香りのように
     ついに終わりなき紅潮した旋律のように
 

     あるいは孤独をみちづれにして
     あなたをひとりどこかの高みへとわたしは
     いつでも勝手に置き去りにしてゆこう
     そこに吹く風に含まれるものがわたしの誠実
     伝わりはしないだろうね それでも
 

     それでもわたしはあなたの
     芯に触れたい
     それがあなたから乖離して
     遠くに光る冷たい死をめざしても
     その そこの奥の熱泉から
     すべての原始へと沈潜してゆく一途な力は
 

     いのちの憧れ 帰るふるさと
     それがわたしの与えうる
     相手を選ばぬ最高の愛
     受け取って欲しい全霊の
     まじりけのないひとつの真剣



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