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勝手に今年の一番: 本

 
2008年も面白い本はいろいろあった気がしますけれど、
インパクトという点でダントツだったのは、


 『楽しい昆虫料理』 (内山昭一著/ビジネス社)


いやー、もうね、ぶっちぎり。



タイトル通りの内容なんだけど、これ、おもしろ半分なゲテモノ昆虫食読本ではありません。

食材としての昆虫について、サイエンスではなく民俗学でもなく、
「家庭料理」という未知の方向からアプローチした、非常に実践的なレシピ本なのです。


そう。 「レシピ本」なんだよなあ。


昆虫食つっても、中国のナントカっていう店でクモだのサソリだのを
食べられるーとか、インドネシアのどっかでアリを食べてみたーとか、
そういう本だの情報だのは、もう別に目新しくもないのでありますよ。
私も韓国でカイコ食ったし。

でも、この、「さぁ、身近にいる昆虫を使ってレッツ・クッキング!」
という姿勢は、斬新というか、そうきたかぁというか、かなり特殊ですわね。


掲載されているレシピは、和洋中エスニックにスイーツと、全79レシピ。
ちょっと目次から抜粋してみましょうか?

 ・子持ちカマキリの南蛮漬け
 ・虫納豆
 ・ハチの子と白マダゴキの雑煮
 ・ヤゴとクレソンのサラダ・アンチョビ風味
 ・クモと卵のファルシー 
 ・タガメ風味のコオロギとイナゴのチーズ焼き
 ・昆虫八宝菜
 ・スズメバチのスチームケーキ
 ・ムシクッキー

などなどなど。

おのおののレシピも、砂糖や醤油の分量まで詳細で、写真も満載、
まったく冗談じゃないのです。普通に本格的なレシピ本なのだ。


著者の内山氏は「昆虫料理研究会」というサイトも運営している
生粋の昆虫食マニア。

氏のブログには、

「徒然なるままに虫食いを楽しむエッセイや、簡単に作れるレシピが満載。
これを読むと誰もが虫を食べてみたくなる。」

という、「それは言い過ぎ」なキャッチコピーが添えられており、これまた
いたって真面目に更新されているご様子。


そう。 本人「いたって真面目」なゆえの奇妙なズレ感。
この姿勢こそが、この本の何ともいえない味わいなのだ。


どのあたりがそうなのかという話をする前に私の姿勢を明らかにして
おきますと、昆虫食に対して「いやーん、きもーい」とか言う気はないです。

たしかに食用するに抵抗がある虫とない虫とがありますが、
牛や豚に大量の穀物を食わせて不自然にブヨブヨと育て上げるよりは、
そのへんの虫をつかまえて食うほうが生物としてマットウじゃないか。

この本を買った理由も決して怖いモノ見たさではなく、
いやそれも20%くらいはあったけど、「来るべき食糧難の時代に備えて、
虫が食べられるならそれに超したことはないわね」という目的からだったの
でした。


そんな「昆虫食もまあいいんじゃん」な私が読んだって、この本はなんとも
微妙に、飲み込みにくい。


たとえば、クッキーの上に甲虫がデデンとのっかったグロい「虫クッキー」の
レシピに添えられた文章。

《クラス会などおおぜい集まる時などに便利です。簡単に作れてだれでも
食べやすく、話題作りにもってこいです。》 


これも虫の見た目まんまの「マダゴキと赤かぶのなます」のレシピには。

《(マダゴキの)おなかの真っ白な脂肪体がピンク色に染まり、
見た目もきれいでお正月らしさを演出してくれます。》 


カタツムリに対する説明書き。

《梅雨どきなどカタツムリの旬です。》 


奥本大三郎氏(ファーブル昆虫館館長)との対談では。

《(コオロギは)鳴き声もきれいだから、鳴き声も味わって、なおかつ
食べられると。一石二鳥でいいってよく言うんですけど。あとゴキブリは
残飯を全部食べてくれますから、エコサイクルにも一役。》 


これ全部、本人、ウケる気なんか皆無ですから。 いたって真面目。

笑い飛ばしたいんだけども、本を通してビシッと貫かれている真面目さに、
笑いが引っ込んじゃうんですよね。
「クラス会にそんなもん持っていくヤツいねえよ」とか
「旬って言われてもアンタ」とかのツッコミが非常にしづらいのあります。


もっと、こう、
「昆虫って気持ち悪いと思う人も多いですよね、だけどこう料理したら
問題なく食べられるし、じつは味もいいんですよ?」
みたいな、なんというか 「こっちより」 のマイルドな姿勢を期待してたんだけど、
完全に「あっちより」の語り口なんだよなあ。
ピンクに染まった虫のハラワタが「正月らしい」ってどういうセンスだよ。


もう、なんとも飲み込みづらい気持ちになってきます。


そして、そこまで日常の料理に練り込んで著者がカジュアル化を
推進している昆虫料理がですね、そえられたカラー料理写真を見る限り、

「まあ、どこに虫が入っているのかワカラナイわ、普通においしそう!」

っていうベクトルじゃなく、

「ぎゃー! なんやこら! 料理に虫が混入しとるで!」

と、関西弁で叫びたくなるほどあっけらかんと、料理の上に形のままの
虫がうじゃーと載っけられた恐怖のビジュアルなんだよね。
「いや、こんだけレシピに凝るんなら、そこも工夫しようよ!」って、
思いっきり突っ込みたくなるよ。


まあ、いろんな角度から楽しめる本ですよ。ちょっと神経まいっちゃうけど。


てことで、今年一番の本は、『楽しい昆虫料理』に決定!!


あ、もちろん、こんなうがった読み方をしなくても、
「虫料理のレパートリーが佃煮しかなくて困ってるのよね~」と
お悩みの奥さまは、充実のレシピ本として有効にご活用ください(´∀`)




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