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2011年2月

おしぼりうどん

 
もうけっこう前の、12月の話なんですけど、

長野県の坂城町まで「おしぼりうどん」を食べにいってきましたよっと。


王子が中国出張のかえりのJALから持ち帰ってきた機内誌で
はじめてその存在を知って、おいしそーだなーと。

思い立ったらすぐ行動 (楽しそうな場合に限っては!) ってことで、
出張の翌週には出かけて参りました。


免許をもたない私は、運転ができません。
全行程のハンドルを握るのは王子。

2ヶ月前の岐阜県鍾乳洞旅行では1泊2日900キロを運転させられて
かなりお疲れだったのに、喉もと過ぎた熱さをケロケロと忘れて、
王子は 「うどん、うどん」とはしゃいでいます。
まったく食い道楽野郎というのは、たいがい楽観的です。


今回は、さらに過酷な、長野日帰り強行軍。

やっぱり最終的に疲れ果ててた王子の頑張りを
記録しないのも悪い気がしますので、
遅くはなったけど、書いてみることにしたというわけです。


12月8日の東京はぽかぽかの陽気、10月並の気温でした。
完璧な天候の中をハイテンションで高速をぶっとばす心地良さったらありません。

「スタッドレスでもチェーンでもないタイヤで長野に12月に行くなんて
無謀かと思ったけど、ぜんぜん心配いらなかったなー!」
「ホントだねー、むしろ暑いくらいよねー!」

なんて、ガンガンのカーステレオに負けない声をはりあげてきゃぴきゃぴ
やっていたってのに、諏訪のトンネルをぬけて驚いた。

いきなり、山がまっしろ!


「おおお、国境の長いトンネルを抜けると雪国であった――!」


思わず叫んでしまう、おどろきの瞬間芸!

さっきまで周りは緑緑した杉山だったのに突然の銀世界、
そして路面はつるっつる!


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「な、なんか寒いっ」とあわてて暖房のスイッチをひねり、
「し、慎重にね」とスリップに気をつけつつ、そろりそろりと、
坂城町をめざしたのでした。


と、のんびり旅行記モードもいいけど、おしぼりうどんについて
なんも解説してなかったことを思い出した。

おしぼりうどんってのは、「ねずみ大根」という辛味の強い大根をおろして
絞った汁に、甘めの信州味噌をとき、それをつけ汁にして、
手打ちのうどんを食べるという坂城町の名物です。


ウィキペディア先生によると、

《なぜこのような食べ方になったかというと、信州は海から遠く
離れていたことがあげられる。昆布や鰹節といった海産物は
手に入りにくく、出汁にできない。また、醤油も東日本で一般に
普及したのは江戸時代も後期のことであり、田舎では高級品であった》


だそうで、要するに代用食なんですけど、つゆで食べるのとは違った
味わいもまたヨシということで、今に伝えられているわけです。

大根の汁のぴりっとした辛さの奥に自然の甘みが広がるその味覚を、
地元では「あまもっくら」というのだとか。


気になるじゃありませんか。




やってきたのは「かいぜ」。

スタンダードなおしぼりうどんが食べられる有名なお店のようです。


都心では考えられないだだっ広い敷地に、決め手となるねずみ大根が
干してあります。軽く干したほうが味がよくなるのかな。


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ねずみ大根に、ズームイン!


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この、コロンとした寸詰まりの形が「ねずみ」の由来に違いない。

ご丁寧に、しっぽまでついてます。


「かいぜ」さんのメニューは、

おしぼりうどん・そば、
めんつゆ味のうどん・そば、

以上! と、潔いものでした。


専門店らしい感じに期待が高まる中、おしぼりうどん ふたつくださいな、っと。


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ジューサーでぶい~んとジュース状にしたねずみ大根の汁に、薬味と、味噌。

うどんは、つけ麺でいうところの「あつもり」です。

灰色がかった色味と、切り口のエッジ、ねじれ具合から、讃岐系のつるりシコシコ麺
ではなく、富士吉田や武蔵野系のガシガシ麺であることがうかがえます。

「おしぼりうどんは初めてですか?」 と、店員さん。
「あ、はい、初めてです」
「でしたら、お味噌をぜんぶ入れると、食べやすくなりますから。
お味噌は追加もできますからね・・・」

やさしく微笑みながらアドバイスをいただきました。

ん? と、顔を見合わせる王子と私。

「・・・そんなに辛いのかな?」
「いや、でも、『あまもっくら』なんでしょ? よくわかんないけど」

こそこそ話し合いつつ、まあいいや、まずは味噌無添加、
100%ねずみ大根汁にて、初のおしぼりうどん、いってみます!

つるりとすすれない、固めの麺をわしわしと口の中にねじ込んでみたらば。


「ん、まあ、大根だな」
「うん、甘みがけっこうあああっ、うわーーーーーー!!!!!!」


かかかかかっ!!!


かっらーーーぁぁああぁぁあああああああぁッッッッッ!!!


ファーストインパクトの、大根らしい土くささのある甘味はほんの幻、

数秒後には爆裂に舌を、口内を、喉を、ありとあらゆる粘膜を、
ビリビリと揺さぶってくる! 辛い! 本気の辛さ!!


トウガラシの熱を帯びる辛さとも、ワサビのツンと爽やかな辛さとも違う、
しみるような・・・というか、胃がでんぐり返るような・・・というか、
クハーッとした刺激で、

ひとことでいうなら、「チャクラが開く」って感じの辛さです。
ちなみに第3チャクラね(どうでもいい)。


「これ、これさ、身体にいいの? 悪いの? (涙目)」
「わからん。大根おろしなんだから消化によさそうだけど、俺の胃は
『ムチャすんな』と言ってるみたいだよ (涙目)」

なんて会話をしながら、味噌を溶き入れて食べてみる。

「あ、だいぶ甘くなった」
「うん、甘くて、そして、やっぱり辛い」
「そうね、、、胃がシクシクすることに変わりないからね」

とにかく、粘膜に沁みる……。

味噌を少しずつ増量しながら、わしわしわしと食べ進みます。

「一言で味をあらわすなら、大根おろしの汁と味噌の味だな」
「そのまんまじゃんって突っ込みたいけど、その通り・・・」

単調な味に飽きてきたところで、薬味を投入。

「ねえ、かつぶし入れたら食べやすくなったよ」
「そりゃそうだろうけど、俺は入れないよ。『出汁を使わないが旨い』っていう
おしぼりうどんのコンセプトに反してしちゃうじゃない」
「いいじゃん。だいたい、かつぶし入れずに旨みを出すなんて無理があるんだよ」
「しおりちゃんって、たまに元も子もないこと言うよね……」


とかなんとか言いながら、結局ふたりとも、きれいに完食。

完食したということからもわかるように、まずいとか、そういうアレでは
ないのですよ。

けれど、手放しに美味しいとはおすすめできない味でもあり。


<おしぼりうどん まとめ>

・日本中のうどんがこれになっちゃったら、かなり困る。 てか、悲しすぎる。

・でも、一生に2回くらい食べるものとしては、ぜんぜんあり。
(10年後に誘われたらまた食べにくると思う。)

・なんせ刺激的なので、ハマる人にはばっちりハマる味かもしれない。

・食べた後は、かつおぶしや煮干による「出汁」を考え出した人の偉大さに
 あらためて感じ入る。


うどん自体、ガシガシ系よりも、讃岐系のつるりとコシのある麺のほうが
好みなんで、ちょっと偏った評価になっていることは否めませんが。


食べ終わるころには、でんぐり返っていた胃はホクホクとした熱を帯び、
身体の中からあったかい感じになっていました。

ただ、やっぱり、身体にいい暖かさなのか、悪い暖かさなのか、
判別しづらいような、微妙な痛みをともなう暖かさではあるんですけどね。






食後は、せっかく長野まで来たんだから~ってことで、
日帰り入浴施設に寄ってみたり。

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(おぶせ温泉あけびの湯。
石垣の上の透垣の裏がすぐにもう露天風呂なので、駐車場からふつうに
女湯露天がみえちゃうというスリリングな環境)


天然の湧水がある神社に立ち寄って、お水をくんでみたり。

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(古い森にある神社には、なかなかに敬虔な気持ちにさせられましたが、
この看板はどーなのか。説明機は住職みずからナレーション担当)


善光寺まえの参道で、濃厚な栗ソフトクリームを堪能したり。

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(竹風堂というお店です。
洋風の栗スイーツの味ではなく、和菓子の「蜜煮の栗」をソフトクリームに
練りこんだような、不思議な味でした)




全体的には非常に中身のつまった日帰り小旅行でありましたよ。



ポメプー くぅたろう写真館

ポメプー


ポメプー


ポメプー


ポメプー


ポメプー


ポメプー


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かわいいのう・・・。




(このブログ史上最短の文章!)



激うまベーコン

 
「めるかーど」という販売元の「おたる桜いぶしベーコン」が

めっちゃくちゃ美味しくて好みです。

披露宴の引き出物のカタログギフトから取り寄せたことが出会い。

以後、我が家には欠かせないベーコンとなっています。


燻香が高く、塩気に尖りなく、肉のうまみと主張は強く、
あぶらの部分はむっちりときめ細やか。

しかも! リーズナブルなのです。


北海道+ベーコンで検索して最上位に出てくる某有名お取り寄せの
ベーコンも美味しいですけど、

私としては、「めるかーど」の方が、15倍くらい好みの味。


ブロックだから、好きに切って使えるし。

1.5センチ厚くらいにぜいたくに切って、ベーコンステーキにすると、
いくらでもワインがいけちゃうんだな。(マスタードとピクルスを忘れずに!)


しかしまあ、サイトが笑えるほどそっけない → http://www31.ocn.ne.jp/~mercado/


商売っけないなーという感じです(笑)。


工場で大量生産ってわけじゃないみたいなので、
あんまり大人気になったら困るんだけど、

ほんとにおいしいから、私なんかのブログを読んでくれている
奇特な方にこそっと耳打ちしてみました。



犬を室内飼いするデメリット

 
ワンコのくぅたろうが来ましてね。

始まったわけですよ。ええ。犬暮らしが。


犬を飼い始めたんだっていうと、だいたいの人から、
「いいなー、でも犬との生活って大変でしょー?」って訊かれます。


くぅたろうが来て6日目という、まだまだ犬に慣れていない、
犬シロウトの私が、率直にお答えしましょう。




はじめて犬を飼うのはね、・・・・・・大変です!




と、いうと、「そうよね、大変よね、散歩とかトイレの始末とか」と、

“お世話の大変さ”を忖度してくださる方がいます。


が、お世話はね、たいして大変ではありません。


まだ見知らぬ家と土地に慣れていないくぅたろうの散歩は散歩ではなく、
「ビビって縮こまる犬を抱えてうろつき、たまに下ろして2~3歩歩かせ、
地面にへばりついて震え始めたらまた抱っこする」を繰り返すという
めんどくさい時間ではありますが、

そしてまた家に来て1週間未満の子犬はトイレなんか覚えやしないんで、
雑巾と脱臭スプレーを持って一日中どっか掃除しているような生活では
ありますが、

そんなもんは、なつかしの言い方でいえば、「想定の範囲内です」。


また、「そうよね、大変よね、ムダ吠えとかかみ癖とか」と、
“しつけの大変さ”を心配してくださる方もいらっしゃいます。


が、これもまったく大変ではありません。


くぅたろうはまったく吠えないんですよね。
こればっかりはもともとの性格なんで、ラッキーでした。
最初は私の姿が見えなくなったときに「きゅーんきゅーん」と鼻鳴きしてたんですが、
あんまりしつこいときにペットフェンスをぶったたいて「黙れ」と言ったら、
以後二度としなくなったいい子です。

噛み癖も穏やかなもんで、室内フリーにしているときも、家具の足とか、
洋服とか、コードなどは噛みません。たまに一心不乱に王子の靴下を
噛んでいるくらいかなぁ。
遊んでいるときに私の指を甘噛みしてきたことはあります。
そのままゲエってなるまでのどの奥に指をいれて「噛むなよ」と凄んだら
やらなくなりました。

わりとすぐ「こりる」性格の子なんで、しつけはラクです。


じゃあ、いったい何が大変なのかというと、ですね。


それは・・・・・・、 「視線」 です。


ペットフェンスで囲われたリビングの片隅が、くぅたろうのスペース。

朝、昼、夜と、1日に3度、そこから出して遊ぶとき以外は、
フェンスの内側で待機させているのですけれども。


リビングで本を読んでいるとき、


「ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ」


料理の支度をしているとき、


「ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ」


テレビを見ているとき、


「ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ」


電話をしているとき、


「ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ」


王子と食卓を囲んでいるとき、


「ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘッ」


もうね、


ずーっと、ずーーーと、私を、私だけをガン見しながら、ヘッヘヘッヘと
荒い息をついてるんですわ。 得意の笑顔を浮かべて。




これが、キツい!!




わかってます、私だって。
相手、犬ですからね?
ヘッヘヘッヘ言うよそりゃ。仕方ないよ。見ちゃうよ、飼い主のことは。


吠えちゃいけない、鼻鳴きもしちゃいけないと、私に言われてすぐに
理解したくぅたろうは、暖房のきいたあったかいお部屋のせいで
舌をたらしながら、お行儀よく、ひたすら待っているだけなんです。

いつフェンスから出してくれるのかな、遊んでくれるのかな、って、
期待に満ちたキラキラの目で、大好きな飼い主をじっと見つめている、
それだけなんです。

吠えるな、噛むなと荒っぽく教えた私でも、さすがにそこまで健気な
くぅたろうに、「見るな! こっち見るな!」 なんて言えません。


・・・言えないんだけどさあ!!


なにこの圧迫感!!


目があうと、勝手に「おすわり」と「伏せ」を代わる代わる実演して、
「ぼくいいこなの、教えられたことできるの、だから遊んで、こっち来て!」
と、フェンスの向こうで無言のアピールをしてくるくぅたろう。

私が誰かとしゃべったり笑ったりごはん食べたりうっかりつまずいて転んだり
掃除機をかけたりダイエット体操したりするたびに、
なぜかものすごく楽しそうに興奮してぴょんぴょん跳ね、クルクル回るくぅたろう。

つねに、まんじりともせずに、そのアツい視線は私だけを追いかけている。


これ、こういう視線の人、なんか、見たことある・・・と考えて、思い出した。
先月、友人に連れて行かれた、某ジャニーズくんのソロコンサート。


某ジャニくんがサングラスをとっては、「キャー!!」

サンキューと言っては、「キャー!!」

手を振っては、「キャー!!」

尻を出しては、「キャー!!」

口から金魚を吐いては、「キャー!!」 (後半ふたつはウソ)


ささいな仕草のいちいちが、もの狂おしいほど愛しくてたまらないといった
彼女たちの態度が、くぅたろうに重なります。
ファン、だ。
くぅたろうの視線と態度は、熱狂的ファンってやつのそれだ。


カリスマ獣医師野村潤一郎氏は、
犬は動物の中で唯一肉眼で神を見ることができる生き物で、その神とは飼い主、
みたいなことを書いておられますよね。

すてきな言葉だと思いますが、
私の体感としては、飼い主は犬にとって、神というより「アイドル」。

熱狂的ファンは、崇拝するアイドルの意を迎えることに必死ですし、
「やーん、●●くんがしゃべってるー!」っていう「あたりまえだろ」なことにも
おめめハートにできちゃうし、ちょっとでも視線くれたら失神するほど嬉しいのです。
なでなでされるだけで嬉ション(歓喜のあまりチビること)しちゃう
くぅたろうの気持ちもわかるってもんだ。




犬暮らしはすてきです。

今までにない刺激と楽しさに満ちています。

それは間違いない。

私はくぅたろうを迎えて、本当に、本当によかったと思っています。


それでも、家の中にいながらつねに熱狂的な視線の先にいるのって
「けっこう落ち着かないよ」 と、

“ファンの前のアイドル”で居続けなければならない生活ってのは
「けっこう大変だよ」 と、


犬を迎えて6日目の、新米飼い主は思うのでした。


犬を室内飼いするにあたって、
世話とかしつけとかの覚悟を書いたサイトはたくさんあるけれど、
「視線に対する覚悟」を書いたサイトが見あたらなかったので、
覚え書きとして、ここに記しておきます。


ま、すぐ慣れるんでしょうけどね。 きっと。 たぶん。


そうであってくれ・・・。



こんにちは、わんちゃん。

 
17時25分。
羽田空港に到着した私は、ここ数年で最高の緊張をもって、
「ANA CARGO」カウンターのある西貨物停留所ゆきの循環バスを待っていた。
人ならぬ犬は、航空会社の定義によると「貨物」である。

ほんの数分前に、今日から我が子になる「彼」は、大阪伊丹空港より
約1時間のフライトを終えて、遠く東京の地に運ばれてきたはずだった。
羽田空港到着ロビー階にあるバスターミナルで、
小さな小さな身体ではじめての空旅を経験させられた、
小さな小さな命の無事を、ひたすらに願う。


「里親を募集しています」
偶然たどりついたブログには、そっけない説明と、3枚の写真。
ポメラニアンとプードルとパピヨンと日本犬をごっちゃに混ぜたようなその
むく毛の牡犬は、驚いたことに、満面の笑みを浮かべていた。
しかも、しっかりとしたカメラ目線である。

私は食い入るようにその笑顔を見つめたあと、すぐにブログの主にメールを送り、
次の週には「彼」とのお見合いに出かけていた。片道4時間半をかけて。

値段のついていない雑種犬のために、往復3万円以上の金額を使って、
ほんの15分の面会をする。
酔狂とは思わない。
犬を探していたここ数ヶ月、ネットの海で何百頭もの犬の写真を目にしたのに、
彼だけが私にアクションを起こさせた。呼び寄せられたとしか思えなかった。


新大阪からさらに地下鉄と私鉄を乗り継ぎ、1時間以上かけてたどりついた場所で
彼に対面した私は、自分の直感に感謝した。
手がかりはたった3枚の写真だけ。徒労に終わっても仕方がないと自分に
言い聞かせていたのに、そこにいたのは写真のままの、満面の笑顔の子!
「この子、笑ってますね」
彼を育てている仮親の方にそう言うと、
「え、そうですか?」
怪訝な顔をされる。
私には、ニコニコと人なつこそうに笑っているようにしか見えない顔。
まったくの気のせい、都合のいい勘違いなのかもしれない。それでも。

「ウチの子になるか?」

彼は私の膝にそっと手をかけると、差し出した手を丁寧に舐めた。


彼の体調と、我が家の受け入れ準備が整ったことをメールで確認しあい、
正式に彼が輸送されてくる日取りが決まってから、私はずっとずっと
落ち着かない日々を過ごしていた。
ああでもない、こうでもないと名前を考え、ドッグベッドやおもちゃを
吟味しながら買いそろえて。
あと4日。あと3日。あと2日・・・。
どれだけ今日を楽しみにしてきたことだろう。


ようやくやってきた循環バスで西貨物に着く。
そこはトラックだけがごうごうと行き交う灰色じみた殺風景な場所だった。
すっかり暗い。
轟音を立てながら通過するヘッドライトに、ぎらり、ぎらりと照らされるたびに
不安が降り積もってくる。

ゲートで身分証明書を提示し、名前と連絡先を簡単に記入。
トラックにこづき回されるようにしてたどり着いたANAのカウンターは、
小さな事務所のような佇まいで、ただガランとしていた。
人間の乗り降りする、あの、キラキラした暖かい空港とここは、
なんて違いなんだろう。


狭いケージに押し込められて、貨物として積まれて。
生まれて初めての爆音、それに次ぐGの洗礼、そして絶え間ない揺れ。
理不尽な暴力にさらされ続けるような1時間のあと、殺風景な集荷場に
並べられている、彼。


わかっている。私のわがままだ。
私が勝手に一目惚れをし、勝手に大阪から呼び寄せた。


無機質なカウンターで簡単な受け取りの手続きをしながら、
小さな身体にあり得ない無理をさせたことが、ただただ申し訳なくて、
私の緊張はひたすら高まっていく。
無事でいてくれ。無事でいてくれ。

お願いだから、無事で。 頼む。


「お待たせいたしました、若崎様。
A様からお受け取りのわんちゃんで、お間違いないですね」


カウンターに走り寄る。
台に置かれたケージは静まりかえったまま。クンとも鳴かない。どうした?

一瞬の不安のあと、哺乳動物の動き回る確かな気配。
プラスチックのケージが振動をはじめる。ゴトゴトゴト。
そして、ケージの扉の格子からチョコンと飛び出してきた、ピンクの鼻がしら。


無事だ! 無事だ!!


扉をあけて、かわいそうに、少し吐いたあとのある身体をやさしく抱っこする。
そこに人間以外の生き物がいるというだけで、殺風景な空間がとたんに
色づいてくる不思議。無表情に手続きをしていた職員がにっこり笑う。
そういえば「わんちゃん」っていってたな。「犬」とは言わないんだ。
まあ、「お荷物」みたいに「お犬」っていうのも変だしね。今さら気がついて、
妙におかしくなる。


必死にしがみついてくる背中を何度も何度も、何度もなでて。


なでているうちに、頭のてっぺんの毛だけが黒いことに初めて気がついた。
なんだか河童みたい。河童、河童といえば、『河童のクゥと夏休み』っていう
アニメ映画があったな。内容は知らないけれど、ひらめいたのも何かの縁だ、
王子はきっと反対しないに違いない。

うん。 決めた。




「うちに帰ろう、クゥちゃん」




命名、クゥ太郎。

ようこそいらっしゃい、そして、末永くよろしくどうぞ。






家族が、増えました。





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ワンコが今日くるっ!

 
本日の夕方、17:10羽田空港着のANAに乗って、
私の可愛い可愛い、可愛いワンコが、
正確には2週間前にちょっと見ただけだから本当に可愛いかどうかまで
よくわかんないんだけど、でも絶対に可愛いに決まっているワンコが、
私のもとに到着します。


どきどき。
どきどき。


あーもー緊張がいきすぎて、昨晩からずっと食欲ない。


ヒョウモントカゲモドキのトリアゾを買ってきたときとは、だいぶ違った気分です。
トリアゾは、なんてったって爬虫類。
哺乳類的なベタベタした愛を嫌い、整った環境と不干渉を好む静かな生き物を、
なるべくこちらの気配がストレスにならないように配慮しながら、
最低限の触れ合いにとどまらせてお世話をする。
ペットというよりも、観葉植物を丁寧に栽培するような種類の楽しみを
トリアゾは私に与えてくれています。


だけど、本日ウチに来たるのは、犬。ドッグ。ワンコ。
人間が文明生活を始めてすぐ、一番最初に「家畜」になったといわれる、
最古にして最強のパートナー。

わかりあうことを最初から放棄している爬虫類とは違って、
彼らは「飼い主の愛を食っている」ともいわれるわけで。

そして世の中には「ダメな犬はいない、ダメな飼い主がいるだけ」という
おそろしい言葉もあるわけで。


・・・正直、こわい!


ワンコはすでに子犬とはいえない7ヶ月の少年犬、
難しい年頃に仮親さんから引き離されて、なついてくれなかったらどうしよう?

甘やかしてダメな犬にしちゃったらどうしよう? 
厳しくしすぎて臆病者にしちゃったらどうしよう?

トイレを覚えないくらいはいい、だけど人を噛むようになったら?
近所から吠える声がうるさいっていわれたら?

何千回脳内シミュレーションしても、不安がじわりと染みだしてくる。


なによりも。
ワンコを不幸にしたらどうしようって思うと、こわい。


トリアゾを不幸にしないことは簡単でした。
完全に環境に依存している爬虫類は、適切な温度と湿度と光、
そして新鮮な水と餌があれば満足する生き物です。
活コオロギを確保し、高断熱のケージを自作し、ヒーターの温度と
水苔ベッドの湿度をメンテナンスするという一定の手間をかければ、
だれだって飼い主の役目をそこそこに果たすことができます。


だけど、だけど、犬は。

ふかふかのベッドとお水と餌と運動、だけじゃあ、ダメだよね。
機械的なお世話では満たされない心をいっぱいにしてあげるには、
どうしたらいいんだろう。

わからないことには、自信がもてない。自信がもてないことは、こわい。


愛したくて、かわいがりたくて、うずうずしてる両手。
こわくて、不安で、ハの字になったままの眉。


どっちつかずのヤジロベエみたいな顔で、今日、お迎えにいきます。


家具なんかいくら壊してもいいから、
ウチの子になってよかったって思ってほしいなあ。


わくわくの序章

 
おひはちぶりです! 久しぶりすぎて噛んだ!

今年に入って仕事やめたっつーのに国民年金の督促状がドーンときちゃって、
新年早々たいへん痛い出費をした若崎です。さきほど払ってきました。


えーっと、実は、ワンコを飼うことになりました(≧∀≦)
準備準備っとワタワタした日々を過ごしております。


犬がほしいなあ、と思い始めたのは、11月のことです。
王子の説得(というか懐柔)は、今回も大変でしたよー。

彼は小さいころから魚すら飼った経験がないのです。
両親があまり動物好きではないせいもあって、慣れていないというか、
生き物を飼うことに戸惑いが強いんですよね。


まあ、でも、説き伏せてまで飼うことに対して、心配はありませんでした。
トリアゾ(ヒョウモントカゲモドキ)を飼うときも最初は大反対でしたけど、今では、

「こんな可愛い生き物は、この世にいないッ!」だの、
「そもそも俺が飼おうって言ったんじゃなかったっけ?」 だの言ってますから。

いったん仲間になったものに対して、王子は無条件にメロメロです。
あまあまです。甘やかされてます私も。


今回は、世話の大変な「毛のもの」ってことで、王子はもっともっと大反対。
「犬なんか汚いし、生活が変わっちゃうし、旅行にもいけないし、
俺はどっちかというと猫派で犬は好きじゃないし、もの壊されるし、
他にもよくわからないけどトンデモナクやっかいなことが起きそうだし」って、
びゃーびゃー言っておりました。


「そう言うけどさ、王子が最後に犬と遊んだのって、いつごろ?」
「記憶にないけど、小学生の低学年の頃とかかな?」
「それじゃ犬のこと何も知らないでしょ。とりあえず、ふれあいにいこう!」
「えー・・・」
「はじめての場所に行って世界を広げることが、今年の抱負でしょ?」
「まあ、そうだけどさぁ・・・」


と、まずは第1段階スタート(笑)。


もともと雑種犬がほしかったこともあって、
保健所から受け出してお世話をしている保護施設や、
自発的に捨て犬の預かり親をやっている人たちの集まりをめぐることにしました。
(もちろんピンとくる出会いがあったら、いずれ連れて帰る気まんまんです。)

毎週のように、いろんな犬を見たり、なでたり。
最初は子犬が手に歯を当ててくるだけで「噛んだー!」とか騒いでた王子も、
少しずつほぐれて、「犬って、なかなか可愛いね」と言い出しました。

よしよし。いい傾向だぞ。


保護犬の譲渡会に行くことが週末の楽しみとして定着し、
王子から犬の話を振ってくるようになってきたところで、第2段階!


トリアゾのときと同じく、階段や玄関の壁に犬のポストカードを貼る、
そしてトイレの小さな本棚やベッドの枕元を犬関連の本で固めます。
名付けて、王子洗脳フォーメーション(笑)。


犬に関して得たホヤホヤの知識を私にとくとくと語り始めたら、
「知ってるよ、そんなん」とか言わずに、ニコニコと聞いて、
「ほんとー? すごーい!」と、とにかく楽しそうにすることが肝要。


そして、「犬の話になると妻と一体感を得られて楽しいなあ」という刷り込みが
できたところで、第3段階、「犬の話題に反応するのをやめる」。


いつも通り、
「犬、また見に行かない?」
「こないだ見た、あの子は可愛かったね」
と、楽しそうに自分から犬の話題をふってくる王子。

「今週は予定があるから無理」
「あの子はちょっと大きすぎるんじゃない?」と、やや適当にあしらう私。

そーしたらば、王子ってば、

「しおりちゃん、どうしたの? 機嫌わるいの? 元気ないよ?」

と、昨日までは「犬の話さえしれいれば上機嫌」だった私の突然の変化に、
心配そうに聞いてきてくれました。


ああ、王子。アナタという人は、なんて優しい、よい人なんでしょう。
ほんとうに私なんかにはもったいない人。心が痛むわ。 にやり。王手。

「だって、王子って犬嫌いじゃない。それなのに飼いたい飼いたいって、
今まで付きあわせて、ごめんね」

と、しおらしくつぶやくと、はい、

「そんなことないよ! 犬、可愛いじゃない! 飼おう飼おう!
俺も、犬、飼いたいって思ってたよ!」


ミッションコンプリーーーーート! イッポン!!


説き伏せていやいや飼わせても、ぜったい後で文句を言うもの。
王子に自分から「飼いたい」と言わせる、これが大事なんですよねー♪


というわけで、ワンコがうちに来ることになったわけです、ハイ。

なんか私、えらい性悪女みたいだな・・・(汗)。





ワンコは、来週やってきます。 7ヶ月の雑種くんです。

保護施設をめぐりつつ、ネットでも探し回っていたんですよ。
そしたら、某個人ブログの「ミックス犬の里親募集中」という記事に出ていた
ワンコに目が釘付け。一目惚れ。

混合ワクチン1回分の実費のみで譲っていただけるとのことでしたが、
念のため大阪までお見合いに行き、抱っこしてみて、
「この子だ!」と確信しました。


おうちに来たら写真アップしますので、しばしお待ちを♪


追伸:
トリアゾもとっても元気です。変わらず溺愛してます。
寒さ対策として、発泡スチロールの板を飼ってきて飼育ケースを工作しました。
保温性があって暖かいため、食欲も落ちてません♪





<余談ではありますが>
私は別にボランティア精神に溢れているから保護犬をもらいたいわけではなく、
雑種のほうが私には自分の子を見分けるのが簡単だし、犬らしく可愛く映る、
というだけです。あと、ショップにいる2ヶ月くらいの血統書付き赤ちゃん犬は、
私には、どれも似たり寄ったりな感じがして、選びにくい。

なので、保護施設を中心に、「うちで生まれた雑種犬、お譲りします」という
ブログや、近所のスーパーの張り紙などをチェックしました。それだけです。

だから、ペットショップから買うヤツはバカだとか、ブリーダーから買うなんて
ブランド犬が好きなだけで本当の犬好きじゃないとか、そういうとんがった
保護犬活動の人たちとはだいぶ温度差があります。
私が足を運んだ保護犬施設の方はみなさんフツウに対応してくださいましたが、
ネットなどでは「ダックスかヨーキーかで迷ってる」みたいな投稿に対して
「どうせ犬を飼うんだったら保護犬を引き取りなさいッ!」みたいな
ヒステリックな論調の方も多くて、それはどーなんだろうかな・・・と思います。

それも正義に基づく意見だと思わんでもないですが、ダックス、ボーダーコリー、
コーギー、シェパード、etc・・・人間が特定の仕事をさせるために改良してきた
結果として、犬種犬はそれぞれ独特の能力や性質を獲得しているわけで、
その独特の性質が好きならば、それは他の犬種では満たされないもの
なのですから、指定犬種を買ったほうがいいと思うの。

余ってるから、可哀相だからという理由だけでは、10年以上連れ添う
伴侶は選べないですよ。「好み」というのは、どうしようもないものです。

ただ、「ぜったいにダックス!」とか意志が固まっていないのであれば、
ショップに行く前に保護施設にも足を運んでみることはおすすめします。
犬の飼い方や、犬を飼う心構えを丁寧に教えてくださいますし、
雑種は個性豊かで一頭一頭に違った魅力があるので、
思わぬ一目惚れもあるかもしれませんよ。

見学後には、ちょっとした寄付もお忘れなく。



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